あがり症は性格が関係する?

大勢の前でスピーチをする時、会社の行事などで司会をする時、初対面の人に会う時、ドキドキしたり、表情が強張ったり、手や背中に汗をかいたりしたこと、誰しも経験があるかと思います。一般に、人前で極度に周りの視線を気にしてしまうことにより、不安や焦りを感じ、その心の乱れが身体的な変化を引き起こしているような症状を「あがり症」と呼びます。「あがる」こと自体は悪いことではなく誰でも自分に注目する目が多いと緊張はするものです。ただ、その緊張の度合いがひどくなり、呼吸が乱れるほど動悸が激しくなる、手や足が他人からも分かるくらい震える、自分で喋っていることが分からないほど頭の中が真っ白になる、声が上ずってしまいきちんと話せなくなる、などの症状が必ず出るとなると少々困ったことになります。特に接客業の方などは。
あがり症の原因として、その人自身の性格は関係するのでしょうか。まず、あがり症が病気なのかどうかと言うと正式な病名として存在するものではありません。対人恐怖あるいは不安が強くて生活に差し障りがあるような症状が出る人は「SAD(社交不安障害)」という診断をされることはありますが。人前に出ると多少の緊張は誰でもするものですから、「緊張の度合いがひどい」=「あがり症」と単純に決めつけることは出来ず、この症状を病気と位置づけるのか本人の性格の問題と片づけるのかはとても振り分けが難しいところです。その人の性格が、あがり症を起こしている一因であることは確かです。だからと言って「極度の緊張を引き起こす性格」があるわけではありません。もう少し細かく説明すると、人前に出ると呼吸が速くなり、血圧が上昇し、筋肉が強張り、多汗になる性格が存在するわけではないと言うことです。
性格があがり症の原因の一つにもなっているというのは、その人の持つ性格の幾つかの側面が「人前で自分を緊張させる」下地として存在しているということです。その側面の一つとして「人前で恥をかきたくない」とか「失敗してかっこ悪い姿を見せたくない」という自意識過剰な性格があります。俗に言う「ええかっこしい」です。失敗したらどうしようという恐怖をその「かっこつけ」な性格が生み出し、極端な緊張状態を引き起こします。また、これと似たものに「上司の期待に応えるために上手くやらなければ」といったように過剰なプレッシャーを感じやすい性格もあります。たとえば重大な商談が成立するか否かを決めるプレゼンを任されたような時。そのプレゼンが終わってからよくよく考えてみれば、そんなに重くプレッシャーを感じる必要もなかったのに、まるで失敗したら即解雇でもされるかのようにシリアスに悩んでいる。その思い込みが、手足が震えるほどの焦りを生じさせます。さらには、怠け癖という性分も極端な緊張を起こさせることになります。大勢の関係者の前で新商品の説明をする役目を命じられたのに「明日でいいや」とやるべきことをやらずに先延ばしにし、準備不足のまま当日を迎えたような場合。資料の作り込みもスピーチの練習も不足していて「こういう質問が来たらどうしよう」とか「説得力のある言い方ができるだろうか」と不安になるのは当たり前です。その不安が表情が強張るような事態を生み出すわけです。何かにつけ現実逃避してしまう性格も、あがり症の原因と言えます。問題に対して正面から向き合わず、何とか何もせずにやり過ごそうとする。でも現実にはそうやって逃げ切れる問題は存在せず、やがて何も対処していない状況で責任を追及される場面がやって来ます。そういう状態で誰かと対話しようとしても、釈明に追われるばかりでまともに言葉を発することも出来ません。そんな事態を繰り返し生み出してしまう性格が「人前では緊張するものだ」という意識を自身に植えつけてしまいます。
では、こういった性格を持つ人は、あがり症を抱えたまま治すことは出来ないのかと言うとそんなことはありません。逆の状態を考えてみれば、それはすぐに分かることです。自分の仕事の査定に影響する上司と面談する時は緊張する人でも、一緒に飲みに行くような仲間にはそんな思いは感じません。つまり、気持ちをリラックスさせれば極端な緊張を感じることはなくなるというわけです。自分がどう見られているか過剰に意識してしまう人は、何かスピーチをしている自分の姿を録画して自分で見てみましょう。実際に自分がどのように人の目に映っているのかを直視してみれば、その自意識過剰も解消されます。現実には、ほとんどの人の姿は可もなく不可もなく見えているものです。準備不足や「逃げ」で不安を生み出してしまい、それが緊張につながってしまっている人は、比較的容易にこの問題を克服できるかもしれません。「今日、準備を進めるのは二度と人前で緊張して失敗しないためだ」と日々の仕事において意識を強めるようにすれば、やがて良い結果が出ることになります。
あがり症は病気ではないし、誰しも人前に出た時や高い期待を自分にかけられている時は緊張するものです。「自分のような人間ができることは高が知れている」。極度に緊張しそうになる時は、そうやって良い意味で開き直れるような性格の側面を持つことも大事です。